スバルだけど水平対向エンジン“じゃない”傑作名車 4選

 スバルの代名詞といえば「水平対向エンジン」に「シンメトリカルAWD」。この2つはスバルのブランドを形成するコア技術であり、実際スバルの自社開発モデルは、現在すべての車種が水平対向エンジン搭載車となっている。

 だが、水平対向エンジンじゃなく、4WDでもない普通のクルマにも傑作車は多かった。特に軽自動車には名車と呼ばれるスバルの車が数多く存在する。

 スバルの作品は、軽自動車であってもコストより安全を優先し、走らせても愉しいのだ。スモールサイズの軽自動車でも登録車と堂々と渡り合える質実剛健な造りが魅力だった。航空機メーカーとして高い技術力を誇った中島飛行機の設計スピリットと技術者魂を感じさせる。

文:片岡英明/写真:SUBARU、編集部


真摯な車作り光った「サンバー」

サンバー「WRブルー リミテッド」(2011年発売)/エンジンは658ccの直列4気筒で最高出力48ps/6400rpm、最大トルク5.9kgm/3200rpm。同モデルにはなかったが、58ps・7.5kgmを誇るスーパーチャージャー仕様もあった

 スバル360と兄弟関係にある商用車がスバル サンバーだ。1960年の東京モーターショーに参考出品され、翌61年に市販に移されている。当時の軽商用車はセミキャブスタイルのトラックが一般的だった。

 が、スバル360から主要メカニズムを譲り受けたサンバーは、リアエンジン、リア駆動の恩恵で、キャブオーバーレイアウトを実現している。そのためフラットで広い荷室スペースを誇った。さすがにモノコック構造ではなく、低床式のラダーフレームを用いたが、サスペンションは4輪独立懸架だ。

 エンジンはスバル360からEK31型と呼ばれる空冷2サイクル2気筒を譲り受けている。最初は18ps/4700rpmのスペックだが、400kgを切る車両重量だから軽やかな走りを披露した。ライトバンに加え、トラックも誕生する。

 1966年に2代目に、1973年には3代目にモデルチェンジ。2サイクル2気筒だが、ついに水冷エンジンを積むようになる。1977年には排気量とボディサイズを拡大し、550cc時代に突入した。この時にEK型と呼ぶ544ccの水冷4サイクル2気筒SOHCエンジンに換装している。1980年には時代に先駆けて軽トラック、バン初の4WDモデルも設定した。

 1982年に4代目となり、ワンボックスタイプのバンは「サンバートライ」を名乗っている。4WDはフロントにストラット式サスペンションを採用し、後期モデルはパートタイム式からフルタイム4WDへと進化。軽商用車として初めて前輪ディスクブレーキも採用した。

 これに続く5代目は1990年にベールを脱ぐ。軽自動車の規格が変わり、排気量は660ccに、全長も100mm延ばされている。エンジンは658ccの直列4気筒SOHC(EN07型)だ。

 スーパーチャージャー仕様もあり、トランスミッションは5速MTに加え、無段変速機のECVTも設定する。フルタイム4WDはビスカスカップリング式とした。このモデルでは93年にディアス・クラシックも誕生している。

 6代目は再び軽自動車の規格が変わった1998年に登場した。ボディサイズはひと回り大きくなり、2002年のマイナーチェンジでは安全性を向上させるためにセミキャプスタイルとなる。エンジンは熟成の域に達した直列4気筒(EN07型)だ。3気筒エンジンよりバランスがよく、快適性は高かった。58psを発生するスーパーチャージャー仕様は、低回転から力強いパワーとトルクを発生する。

 2011年にWRブルーの限定車を発売したのが最後で、2012年にはダイハツのOEMモデルにバトンを託した。乗用車並みの快適性を誇った傑作エンジンが、サンバーに積まれた直列2気筒と直列4気筒だ。宅急便の赤帽仕様はスペシャルチューンのエンジンを積み、耐久性を大きく向上させている。真摯なクルマづくりとエンジン設計は、多くのファンを魅了した。

スバル史上最強の軽「ヴィヴィオ RX-R」

ヴィヴィオのトップグレードとしてラインナップされた「RX-R」/658ccの直列4気筒スーパーチャージドエンジンは、64ps/7200rpm、10.8kgm/3600rpmというスペックを誇った

 軽自動車を得意とするスバルが、「レックス」の後継として1992年3月に送り出したのがヴィヴィオだ。エンジンは658ccの直列4気筒(EN07型)で、SOHCとDOHCの2機種を設定している。

 イメージリーダーの「RX-R」が搭載するのは、DOHC 4バルブエンジンにスーパーチャージャーとインタークーラー、そして電子制御燃料噴射装置の「EMPi」を組み合わせたEN07型エンジンだ。

 ハイオク指定で64ps/9.0kgmのパフォーマンスを誇り、トランスミッションは5速MTだけとした。駆動方式はFFとフルタイム4WDがある。

 「RX-R」は軽量ボディだったこともあり、ハンドリングのよさが際立っていた。もちろん、エンジンはパワフルだ。スーパーチャージャーだからアイドリング回転のちょっと上から分厚いトルクが湧き上がり、強烈な加速を楽しむことができる。

 最高出力は7200回転で発生するが、その気になれば1万回転まで使い切ることが可能だ。レーシングエンジンのように気持ちよく回り、滑らかさも群を抜く。5速MTを駆使すれば、上級クラスのスポーティカーを簡単に追い回すことができる実力派だった。

ただのOEMじゃない!! 隠れた名車「トラヴィック」

トラヴィック(2001年発売)/元のオペル ザフィーラが289万円だったのに対し、エンジンが大きいにも関わらず約100万円安の199万円からとOEM車ながらコスパも高いモデルだった

 軽自動車だけに目が行くが、登録車にも傑作エンジンを積んだクルマがある。その筆頭が21世紀の最初の年、2001年夏に発売したドライバーズミニバンの「トラヴィック」だ。

 当時、スバルはGMと提携していた。そこでGMのタイ工場で生産しているオペル ザフィーラを譲り受け、トラヴィックの名で発売している。ザフィーラは1.8Lエンジンだが、トラヴィックが積むのは2.2Lの直列4気筒DOHC 4バルブエンジン。これに4速ATを組み合わせた。3列シートを採用し、駆動方式はFFである。

 トラヴィックのエンジンは、GMのコンパクトカーを扱うサターンが開発したものだ。オペルでも使っている傑作エンジンで、発泡スチロールでエンジンの鋳型を作るなど、製造方法も先進的だった。また、スバルとして初めて電子制御スロットルを採用したのも、このZ22型エンジンである。排気量は2198ccで、圧縮比は10.0と高いが、レギュラーガソリンを指定した。

 最高出力は147ps/5800rpm、最大トルクは20.7kg-m/4000rpmだ。軽量コンパクトな設計に加え、ロングストロークだったから当時のスバルの水平対向エンジンよりフレキシブルで扱いやすい。実用域のトルクは厚みがあり、気持ちいい加速を見せつけた。また、その気になれば6000回転まで引っ張ることができる。

 バランス感覚がよく、スムースに回り、クルージング時は静粛性も高かった。音色だって悪くない。乾いたサウンドが耳に心地よかった。隠れた名車と言えるだろう。

やっぱり外せない「スバル 360」

スバル 360/全長×全幅×全高:2995×1300×1360mm、356ccの2気筒エンジンは「ヤングSS」で最高出力36ps/7000rpm 、最大トルク3.8kgm/6400rpmだった

 そして、スバルの自動車史において外すことのできない名車がスバル360だ。今につながる量産の軽自動車の基礎を築いた軽自動車で、1958年3月に登場した。この年には東京タワーも建設されている。
 スバル360は中島飛行機の流れを汲むスバルのエンジニアが航空機技術を駆使して設計した力作だ。リーダーの百瀬晋六は量産車として初めてモノコック構造のボディを採用し、車両重量もスクーターのラビット2台分の385kgに抑えている。

 パッケージングも絶妙だ。当時の軽自動車のほとんどは2人がやっと乗れる広さだった。が、スバル360は大人4人が座ることができる。このパッケージングを実現するために、リアに排気量356ccの空冷2サイクル2気筒エンジンを搭載した。だから走りも力強い。4輪独立懸架のサスペンションと相まって、軽快な走りを実現した。売れ行き好調で、日本の景色を変えてしまったのがスバル360だ。

 人々から「てんとう虫」のニックネームで愛され、12年もの長い間、第一線で活躍している。その間に多くのバリエーションを生み出した。セダンタイプのほか、キャンバストップ式のコンバーチブルがあり、最終モデルではSUタイプのツインキャブを装着した高性能モデル、「ヤングSS」も送り込んでいる。

 ホットバージョンのヤングSSが搭載するエンジン(EK32型)は、リッターあたり出力100psを超える36ps/7000rpmだ。高回転域は驚くほどパンチがあり、オーバートップ付き4速MTを駆使すれば豪快な加速を見せた。が、レーシングエンジンのようにパワーバンドは狭く、4000回転以下で元気がない。ピーキーなエンジン特性だが、ツボにはまれば痛快な走りを満喫できた。

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